こんにちは、トモキです!
中国の大学への留学は、語学や専門知識を学ぶだけでなく、日本とは異なる組織の仕組みやルールに適応するプロセスでもあります。キャンパスの見た目は似ていても、運営のルールや人との関わり方は大きく異なります。
この記事では、中国の大学に進学・留学する皆さんが、教員や職員とスムーズにコミュニケーションを取り、トラブルなく学生生活を送るための「大学の仕組み」と「メール・微信(WeChat)の作法」を徹底解説します。
はじめに:中国の大学という組織を理解する

日本の大学での常識が、中国では通用しないことがあります。まずは、誰がどのような権限を持ち、誰に何を相談すべきかという「組織の構造」を理解しましょう。
1. 「班级(bān jí)」制度:ただの授業クラスではない
日本の大学のクラスは、語学の授業などで一時的に集まるだけのことが多いですが、中国の「班级(bān jí)」は入学から卒業までを共にする、固定された集団です。これは大学内の最小の行政単位でもあります。
- 連絡網の中心:休講情報、試験日程の変更、奨学金の申請期限などの大学からの公式通知は、個人のメールではなく、この班级の微信(WeChat)グループを通じて一斉に配信されることが一般的です。このグループに入っていないと、重要な情報を見逃してしまいます。
- 班长(bān zhǎng)の役割:クラスの中から選ばれた「班长」は、単なる代表者ではなく、教員や事務室と学生をつなぐ重要な役割を持っています。出席確認や課題の回収、教材配布などは班长が行うことが多く、教員の個人的な連絡先やスケジュールを知っているのも班长です。先生と連絡がつかないときは、まず班长に相談するのが最も確実な方法です。
2. 「辅导员(fǔ dǎo yuán)」:生活の全責任者
留学生が最も頻繁に関わり、かつ最も理解しにくい重要な存在が「辅导员(fǔ dǎo yuán)」です。日本語では「指導員」や「カウンセラー」と訳されることがありますが、欧米のカウンセラーとは異なり、学習だけでなく生活全般を管理する専任の職員(または若手教員)です。
- 業務範囲:寮の部屋割り、奨学金の審査、欠席届の承認、ビザや居留許可の手続き補助、病気になった際の病院への付き添い、学生間のトラブル仲裁など、生活に関わるほぼすべての行政手続きを担当します。また、連休中の学生の所在確認や寮の規則違反の取り締まりも行います。
- 権限:辅导员は成績(GPA)をつけるわけではありませんが、奨学金の継続審査や、学生の行いを総合的に評価する「综合测评(zōng hé cè píng)」において強い権限を持っています。成績が良くても、寮の規則違反などで辅导员からの評価が低いと、奨学金が打ち切られるリスクがあります。
- 班主任(bān zhǔ rèn)との違い:よく混同されるのが「班主任(bān zhǔ rèn)」です。班主任は特定のクラスを担当する教員で、学業面のアドバイスや進路指導を行う役割です。
- 辅导员:事務室に常駐し、生活全般や行政手続きを管理する。
- 班主任:専門分野の研究者であり、学習内容について指導する。
- 生活上のトラブルは辅导员へ、勉強の専門的な相談は班主任へ、と使い分けましょう。
3. 教員の種類と「非常勤講師」への連絡
大学の先生にも職位(ランク)があり、呼び方や接し方に注意が必要です。
| 中国語の職位 | 役割と特徴 |
|---|---|
| 教授(jiào shòu) | 最高位の教員。研究室(実験室)を持ち、博士課程の学生を指導することが多いです。大きな権限を持っています。 |
| 副教授(fù jiào shòu) | 中堅の教員。講義と研究の主力であり、修士課程の指導教官を務めます。 |
| 讲师(jiǎng shī) | 若手の教員。教育負担が大きく、学生との距離は比較的近いです。 |
| 助教(zhù jiào) | 授業の補助や実験管理を行います。大学院生が務めることもあります。 |
※注意すべき「外聘教师(非常勤講師)」
企業で働いている人や他大学の教授が、その授業のためだけに招かれている場合、中国では「外聘教师」や「兼职教授」と呼ばれます。彼らは大学内に自分の部屋(研究室)を持っていません。
また、大学から割り当てられたメールアドレスを見ていない(普段使っている所属先のメールしか見ない)ことがよくあります。
外聘教师と連絡を取りたい場合は、「初回の授業時または授業直後に、直接微信(WeChat)を交換する」のが最も確実です。事務室に聞いても個人の連絡先は教えてもらえないことが多いため、授業前後の隙間時間に話しかけることが重要です。
4. 大学院生にとっての「研究室(yán jiū shì)」
大学院生(修士・博士)の場合、所属の中心は班级よりも「研究室(yán jiū shì)」になります。
指導教官(导师 dǎo shī)を中心とした上下関係があり、研究室は一つの家族のような機能を持ちます。先輩を「师兄(shī xiōng)/师姐(shī jiě)」、後輩を「师弟(shī dì)/师妹(shī mèi)」と呼びます。先輩が後輩の研究を指導し、後輩が研究室の雑務(資料整理や来客対応など)を手伝うという協力関係が基本です。
学内でのルールとマナー
大学の組織構造を理解した上で、次に日常的な運用ルールについて解説します。
1. オフィスアワー(答疑时间)のルール
中国の大学にも、教員が学生の質問を受ける「答疑时间(dá yí shí jiān:オフィスアワー)」という制度は存在しますが、日本や欧米とは運用が異なることがあります。
- 事前予約が必須:公表されているオフィスアワーであっても、教員が会議や出張で不在であることは珍しくありません。事前の約束なしにいきなり研究室を訪問することは「突撃」と見なされ、失礼にあたることがあります。必ず事前にメールや微信(WeChat)でアポイントを取ってください。
- 集団での質問:試験前などは、教員が個別の質問を受けるのではなく、教室を指定してクラス全員を対象とした質問会を開く形式が好まれることがあります。
2. 教室でのマナー
- 座席:多くの講義で、最初の数回で学生の座席位置が自然と固定化される傾向があります。
- 質問のタイミング:授業の途中で手を挙げて議論を止めることは、一部のゼミ形式を除き一般的ではありません。教員の講義の流れを尊重し、質問は「休み時間」または「授業終了後」に教卓へ行って個別に聞くのがマナーです。
- 録音・撮影:スライド(PPT)の写真を撮ることは日常的ですが、講義の録音・録画は無断で行ってはいけません。知的財産権や発言内容への配慮から敏感な教員が多いため、必ず事前に許可(微信での確認など)を取る必要があります。
連絡ツールの使い分け:微信(WeChat)とメール
中国の大学生活では、微信(WeChat)が生活のインフラ(基盤)となっています。授業資料の配布、課題提出、休講連絡、支払いまですべて微信上で行われます。しかし、メールの役割がなくなったわけではありません。
1. メールと微信(WeChat)の使い分け基準
| 場面・目的 | 推奨ツール | 理由 |
|---|---|---|
| 初対面の教員への連絡 | メール | 礼儀正しさを示し、相手のプライベートな空間(微信)にいきなり入らないため。 |
| 指導教官への志願・依頼 | メール | 履歴書(CV)や研究計画書などの添付ファイルが見やすく、正式な記録として残るため。 |
| 公式な証明書発行・欠席届 | メール | 「証拠」を残す必要がある行政手続きやトラブル対応のため。 |
| 日常的な質問・相談 | 微信 | 返信が早く、手軽にやり取りできるため。 |
| 緊急時の連絡 | 微信/電話 | メールは数日間チェックされない可能性があるため。 |
| 外聘教师(非常勤)への連絡 | 微信 | 大学のメールを見ていない可能性が高いため。 |
2. 微信(WeChat)での重要マナー
- 友達申請の書き方:教員のIDを入手しても、無言で申請してはいけません。これはスパム(迷惑申請)と見なされ無視されます。必ず「氏名・所属・用件」を書いて申請します。
- 悪い例:「こんにちは」「学生です」
- 良い例:「李老师您好,我是23级国际贸易硕士生山田太郎,关于下周发表想请教您。(李先生こんにちは、23級国際貿易修士の山田太郎です。来週の発表についてお伺いしたく申請しました)」
- ボイスメッセージ(语音)は送らない:目上の人(教員)に対して、学生からボイスメッセージを送ることは失礼とされます。相手に聞く時間と静かな場所を強制してしまうからです。テキスト(文字)で送りましょう。教員からボイスメッセージが来た場合でも、学生はテキストで返すのが無難です。
- 即時の反応:グループチャットで教員から連絡があった場合、「既読」機能がないため、読んだことを伝えるために「收到(shōu dào:受け取りました)」と返信するのが鉄則です。
- 絵文字の注意:スマイルマーク(🙂)は、中国の若者の間では「皮肉」や「言葉を失う」という意味で使われることが多いですが、年配の教員は純粋な笑顔として使うことがあります。誤解を避けるため、学生側は「😁(歯を見せて笑う)」や「🤝(握手)」、「🌹(バラ)」などの無難な絵文字を使うのがおすすめです。
教員・職員への適切なメールの書き方(中国語テンプレート)
微信が普及しているからこそ、きちんとした形式のメールが書けると「教養がある」「礼儀正しい」と高く評価されます。中国語のビジネスメールは、謙譲と敬意の表現が重要です。
1. メールの基本構成
- 件名(主题 zhǔ tí):必ず「用件 + コース名/所属 + 氏名」を書きます。教員は大量のメールを受け取るため、件名だけで中身が分からないと読まれません。
- 例:
关于《微观经济学》期末论文的提问 - 留学生 山田花子 (学号: 2024001)
- 例:
- 宛名(称呼 chēng hū):必ず敬称の「您(nín)」を使います。「你(nǐ)」は失礼にあたるため避けましょう。宛名は「姓+先生」ではなく「姓+職位(教授など)」または「姓+老师」とします。
- 書き出し:
尊敬的王教授:または尊敬的王老师: - 挨拶:
您好!
- 書き出し:
- 本文:最初に名乗り(
我是...)、謙譲語を使います。「質問があります」ではなく「教えを請いたい(请教)」、「見てください」ではなく「ご査収ください(审阅 / 查阅)」を使います。 - 結び:
祝您工作顺利(お仕事が順調でありますように)が標準的です。
2. そのまま使えるメールテンプレート
※[ ]の部分を自分の情報に書き換えて使用してください。
① 病気や急用による欠席届(请假 qǐng jià)
辅导员や授業担当教員に送ります。中国の大学は出席管理が厳格であるため、事前連絡が必須です。
件名: 请假申请 – [コース名] – [氏名] (学号: [学籍番号])
本文:
尊敬的 [教員の姓] 老师,您好!
我是 [コース名] 班级的留学生 [氏名] (学号: [学籍番号])。
非常抱歉地向您请假。由于 [欠席理由: 身体不适 / 需去入管局办理签证] ,我无法参加 [月][日][何限目] 的 [コース名] 课程。
(大変申し訳ございませんが、休暇を申請したく存じます。[体調不良/入管でのビザ手続き]のため、〇月〇日の〇〇の授業に参加することができません。)
我已经委托同学 [クラスメートの氏名] 帮我记录课堂笔记,并在课后及时补习落下的内容。
(クラスメートの〇〇さんにノートを取ってもらうよう依頼しており、授業後に遅れた分を速やかに補習いたします。)※ここが重要:学習意欲を示します。
随信附上我的 [病院の診断書/予約票など] ,请您批准。
(添付にて証明書類をお送りします。ご承認いただけますようお願いいたします。)
谢谢老师的理解!
学生:[氏名]
日期:202X年X月X日
② 授業内容に関する質問・アポイント依頼
講義内容で分からなかった点を質問し、研究室へ行く許可をもらう場合です。
件名: 关于《[コース名]》课程内容的请教 – [氏名]
本文:
尊敬的 [教員の姓] 老师,您好!
我是您 [コース名] 课上的学生 [氏名]。
在复习本周的课程内容时,我对 [具体的なトピック] 这个概念的理解还有一些困惑。特别是关于 [具体的な詳細] 这一点,我不太确定是否应该理解为 [自分の仮説]。
(今週の授業の復習をしておりましたところ、〇〇の概念について少し混乱しております。特に〇〇についてですが、これは〇〇と理解してよろしいのでしょうか?)
不知您是否方便指点一二?或者,如果方便的话,我可以在您下次课后的答疑时间(Office Hours)去办公室向您请教吗?
(ご指導いただくことは可能でしょうか? あるいは、もしご都合がよろしければ、次回の授業後のオフィスアワーに研究室へお伺いしてもよろしいでしょうか?)
非常感谢您的指导!
祝好!
学生:[氏名]
③ 返信がない場合の催促(フォローアップ)
メールを送って1週間経っても返信がない場合。中国のサーバー事情や教員の多忙さを考慮し、丁寧かつ低姿勢で再送します。
件名: Re: [元の件名]
本文:
尊敬的 [教員の姓] 老师,您好!
怕之前的邮件被系统拦截或淹没在您的收件箱中,特此重新发送一次。
(以前のメールがシステムにブロックされたか、受信トレイに埋もれてしまったのではないかと懸念し、念のため再送させていただきます。)
关于 [用件],如果您近期方便的话,希望能得到您的回复。
(〇〇の件について、もし近々ご都合がつきましたら、お返事をいただけますと幸いです。)
再次打扰,深表歉意!
(度々のご連絡となり、深くお詫び申し上げます。)
祝好!
[氏名]
事務手続きの重要ポイント:「公章(gōng zhāng)」文化
最後に、教員へのメールだけでなく、事務手続きにおける重要な概念について触れておきます。中国の大学行政は「公章(gōng zhāng)」、すなわち赤い丸印(スタンプ)によって動いています。
- 印鑑の権威:在学証明書、成績証明書、インターンシップの許可証など、あらゆる書類にこの「公章」が必要です。多くの書類では、学長のサインだけでは不十分で、大学や学部の「公章」が押されていなければ有効になりません。
- 辅导员が窓口:この公章をもらうための申請書に、まず「辅导员」のサインが必要になるケースが大半です。つまり、辅导员との関係が悪化していると、事務手続きがスムーズに進まなくなり、ビザの更新や帰国手続きに支障をきたす可能性があります。
- たらい回しへの対処:「AのハンコをもらうにはBの書類が必要で、Bの書類にはCのハンコが必要」といった状況に遭遇することは珍しくありません。これは悪意があるわけではなく、部署が縦割りになっているためです。感情的にならず、辅导员や留学生オフィスのスタッフに「どうすれば解決できるか」を粘り強く、低姿勢で相談することが、解決への最短ルートです。
さいごに
中国の大学生活をスムーズに送る鍵は、「班级」という集団への適応、「辅导员」という管理者との連携、そして「微信」と「メール」を使い分けるコミュニケーション能力です。
ここで紹介したルールやテンプレートは、中国社会で大切にされている「礼(lǐ:礼儀)」、「面子(miàn zi:メンツ)」、「关系(guān xì:関係性)」を尊重するためのものです。形式(マナー)を守って丁寧に接すれば、中国の先生や職員の方は留学生に対して非常に温かく、手厚いサポートで応えてくれるはずです。「郷に入っては郷に従う」の精神で、充実した留学生活を送ってください!
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